春のひとが羨ましい。鼓動と胎動を同一に持った春のひとが。凡てをその一部として持つ彼/彼女 の何物も増やさず絶えもしないそのからだは、オメガを潅いで磨かれたアルファである。およそ生きている間あらゆる醜さのうちの一つでさえ葬り去れないのなら、何のために飯を喰らい、土を汚し、臭気を発する意味があるのか。「妄想で身を守るのかい。」殻を内側から叩く音がする。「イメエジは禁忌だと教わらなかったのか。」違う、何故見えていないのだろう、否、誰も見てはいけない、気付いてはいけない、刃物など覚えてはいけない、血の匂いを嗅いではならない、あなたは。愛おしさでこの目が潰れてしまう前に、うつくしきひとよそのしなやかな両手で殺してくれ。


「驕るな、愚か者よ。」
「嘘、嘘だ、ぜんぶ、みんな、何もかも嘘だ。」