人と会話をするのが億劫だ。出来れば家に引きこもって、誰にも会わずにじっとりと本を読んでいたい。何処かへ出て何かを言わされたり、考えたり、いらぬことに気を遣うのがこの頃になって愈々厭になった。己を卑下するのも、人を恨むのも、愚かであるというよりは浅はかであるように思う。
叔父が再び入院した。これは都内で独立して広告業を営んでいる人で、まだ五十には満たない。数年前に癌を患い、前回治療したところからまた別のところに転移したらしい。どれぐらい悪いのかは知らない。
人生は物語であるというフレーズには何の魅力も覚えないが、人生を客観的に構成するものは単語であり行であるのだろうとは思う。そうしてどんなに上手い物語も、考えてみれば凡て中途なのかもしれないと思う。
暮れだ。人々は慌ただしい歳末を駆け抜けて、知らぬ間に新年を迎えるだろう。いずれ都心のアスファルトも雪で湿って、それが融ければまた春になるのだろう。けれど今はまだ、そうした想像がいつか現実になることを傲慢に待っているという現実しか、転がってはいないのかもしれない。