このバイトをやっていて良かったなあ、と一番思える日は卒業式の日だ。ありがとう、ありがとう、と言い合って、学位記を持って写真を撮って、先生と学生と楽しそうにあちこちで立ち話をして、「お世話になりました」と事務室まで来て下さる卒業生さんも居て、ひとのそうした嬉しい行事に関わるのも、とても嬉しい。

帰り道はもう随分と濃い春の匂いがする。春の匂いをかぐと嫌な事も何もかも忘れられる。嫌な事も、己の愚かしさも、何もかも。この空気と私だけが世界に在るような無上の幸福が、