だれがぼくの名を

で、取り敢えずトーマの心臓を買った。中学ぶりか。ああオスカーいいよオスカー……

誰も愛していないと心を閉ざして、でもそれでは生きてはいけないのだということを、私にもまた、その愛で教えてくれた人が居る。赦されるだろうか。同じように。心を閉ざそうとしてみても、何を言ってみても、結局のところ、私は、そのひとが居ないと生きていけない。それはこわい。とてつもなくこわい。もしもかれをなくしたとしたら私は凡てを失ってしまう。けれどそれでも傍に居たいのだと思って、さまざまなことを思い出して、泣きながらページをめくった。

トーマの心臓 (小学館文庫)

トーマの心臓 (小学館文庫)